肥満のみで酸化ストレスが高まる可能性が報告され、我々は肥満小児で検討し、21年度に小児でも酸化ストレスが高まるデータを論文として発表した。22年度は研究目的と研究計画にも示したとおり、基礎的研究として、3T3-L1培養脂肪細胞を用いた実験を行い、エンドトキシンやTNF-αなどサイトカインの添加で誘導型NO合成酵素が誘導されNOが産生されることとそれに伴って酸化ストレスが高まること、さらにMCP-1産生などに変動が生じる基礎的結果を得た。また、培養環境(低アミノ酸の栄養状態)で成育に差が生じる結果も得ている。これらを組み合わせ、されに確実な成績を出すように実験を続けている。 また、新しい摂食調節物質である脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor)レベルについて検討を継続し、高度肥満で低下するこの物質が出生体重と有意な正相関することが見出された。この結果について論文を作成中である。また、動物実験を行いNesfatin-1の出生後からの発現変動などについても特に初期の栄養環境の問題として引き続き検討している。 さらに、臨床研究の観点から小児生活習慣病に直結する問題として、小児の体格判定法としてのBMIパーセンタイル値を用いた方法に問題が生じることが判明し、それを明らかにし、広く発表していくことを22年度の研究目的の1つとしてあげた。BMIパーセンタイル法と標準体重を基にする肥満度法とを直接対比させ、一般にも判りやすいかたちで成績を学会などを通して情報発信した。これは極めて重要な問題であるので新たに論文としてまとめ現在投稿している。海外で広く使用されている性別年齢別BMIパーセンタイル法は、日本でもその使用が検討されつつあったが、学童で使えないことを提言できたことは日本の医学を正しい道に進める手助けになったと自負している。
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