前年度に引き続いて、3T3-L1細胞で、TNFαによるMCP-1産生などを検討した。分化させない、前駆脂肪細胞と分化させた後の成熟脂肪細胞どちらにおいても、TNFαの濃度依存的にMCP-1産生は増加した。この産生増加に対して、抗高脂血症剤(PPARα活性化剤)であるゲンフィブロジル、抗酸化作用も有するプロブコール、抗糖尿病薬でありAMPK活性化作用のあるメトホルミンなどの効果を検討した。成熟脂肪細胞においては、アディポネクチンやPAI-1、レプチンなどのアディポサイトカイン産生量の変動についても調べた。これらの薬剤がTNFαシグナルを部分的に阻害し、すなわち酸化ストレスを低減させる結果を得たので、現在、発表に向けて計画している。また、IUGRのモデルラットや出生後の栄養障害モデルなどを作成して、仔ラットの脂肪組織の代謝変化についての検討も開始した。今後さらに研究を継続することにしている。 臨床的な観点からは、将来の生活習慣病発症、DOHaDとの関係から新生児期のアディポネクチンレベルについて検討し、一部成績を論文発表した。また、小児生活習慣病に直結する問題として、小児の体格(肥満)判定法を研究してきた。BMIと内臓脂肪の関連性、BMIパーセンタイル値を用いた肥満判定方法の問題点は論文として発表できた。また、新たに成人で轡囲を身長の1.5乗で割る新体格指標Body Adiposity Indexが発表されたので、これについて小児期においても有用かどうかを外来の肥満児のデータから検討し、日本肥満学会などで発表した。これについては、引き続き海外にも発信する(論文化する)ことを予定している。
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