研究概要 |
本研究では、初期治療抵抗例、あるいは造血幹細胞移植後の再発例などの難治性白血病に対する新たな治療戦略として、ナチュラルキラー(NK)細胞を用いた細胞療法の開発と臨床応用を目指している。具体的には、ドナー由来細胞の提供が原理的に不可能である臍帯血移植後再発の治療のために、i)臍帯血移植におけるドナー由来NK細胞の、生着後の患者血液からの体外増幅および遺伝子改変の実施可能性、ii)allo反応が発揮されにくいとされるBリンパ性腫瘍に対し、抗CD19-キメラ型受容体遺伝子導入によるNK細胞耐性の克服とレセプター機能のさらなる向上、iii)遺伝子改変NK細胞のin vivoでの生存向上、に向けた新規戦略について検討している。本年度は、まず臍帯血移植後患者の末梢血からのドナー由来NK細胞の体外増幅について検討した。その結果、7日後の増幅率は5.3-28.9倍(中央値11.2倍)であり、健常成人(中央値約20倍)と比較すると相対的に低かった。しかし1週以降の増幅は比較的良好であり、3-4週間の体外培養によりコンスタントな増幅が得られた。体外増幅したドナー由来NK細胞は各種活性化受容体を高発現し、健常成人由来の活性化NK細胞と同等のK562殺傷能を示した。抑制性受容体2DL1,2DL2/3,3DL1の陽性頻度は活性化前後で基本的に変化がなかった。レトロウイルスベクターを用いてGFP遺伝子の導入効率の中央値は52.7%(n=10)と十分高かった。抗CD19キメラ型受容体の遺伝子導入も健常ドナーと同様に高い効率で可能で、NK細胞耐性のALL細胞を障害した。今後もさらに多数例の検討が必要であり、年数を重ね症例を蓄積していく予定である。さらに、i)ii)のテーマに必要な新規キメラ型遺伝子と人工的抗原提示細胞の構築も同時進行中である。
|