研究概要 |
本研究では、初期治療抵抗例や造血幹細胞移植後の再発例などの難治性白血病に対する新たな治療戦略として、ナチュラルキラー(NK)細胞を用いた細胞療法の開発と臨床応用を目指している。具体的検討項目はi)臍帯血移植生着後の患者血液から得た末梢血からのドナー由来NK細胞体外増幅および遺伝子改変の実施可能性、ii)allo反応が生じにくいとされるBリンパ性腫瘍に対し、抗CD19-キメラ型受容体遺伝子導入によるNK細胞耐性の克服とレセプター機能のさらなる向上、iii)遺伝子改変NK細胞のin vivoでの生存向上、について検討している。本年度は、まず項目i)について、検討患者数を増やしたうえで、臍帯血移植後の生着患者末梢血リンパ球からNK細胞の体外増幅・遺伝子改変(キメラ型受容体遺伝子導入)は可能であることをアメリカ血液学会(ASH2010, Orlando)で報告した。稀少疾患が対象であり、年間のサンプル収集数は非常に限られているものの、基本的にはH23年度内でデータ収集を打ち切り、専門誌へ発表する予定である。項目ii)については、第3世代受容体遺伝子コンストラクトanti-CDI9-CD28-BB一ζ(CD28、4-1BB、CD3ζの3種のシグナルを同時に発生させる細胞内ドメインを有する)の作成は完了し、レトロウイルスを調整し、ヒトprimary NK細胞に遺伝子導入した。導入効率は十分高く、レセプター蛋白発現も確認されたが、第2世代レセプターと比較すると表面発現が低いようであった。まだ1回の検討なので、さらに回数を重ねて検討する必要がある。項目iii)について、遺伝子改変CD4-T細胞のaAPCを用いた効率的体外増幅法について研究は進行中である。さらにNK細胞の生存促進と機能維持のため、IL-2遺伝子同時発現ベクターについても検討する予定である。
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