研究課題/領域番号 |
21591349
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
今井 千速 新潟大学, 医歯学系, 助教 (90419284)
|
キーワード | 難治性白血病 / NK細胞 / 細胞療法 / 臍帯血移植 / キメラ型受容体 / B細胞性腫瘍 / CD19 / CD4^+ T細胞 |
研究概要 |
本研究では、初期治療抵抗例や造血幹細胞移植後の再発例などの難治性白血病に対する新たな治療戦略として、ナチュラルキラー(NK)細胞を用いた細胞療法の開発と臨床応用を目指している。具体的検討項目はi)臍帯血移植生着後の患者血液から得た末梢血からのドナー由来NK細胞体外増幅および遺伝子改変の実施可能性ii)抗CD19-キメラ型受容体遺伝子導入によるNK細胞耐性の克服とレセプター機能のさらなる向上(第3世代ベクターの作成)iii)遺伝子改変NK細胞のin vivoでの生存向上、について検討している。 平成23年度は、項目i)については、解析数を増やすべく鋭意努力しているが、そもそも対象が稀少疾患であり、かつ、偶然にも移植適応患者が少なく臍帯血移植自体の実施件数が例年に比べて非常に少なかったため、予想よりもデータ集積に時間がかかっている。 項目ii)については、第3世代受容体遺伝子コンストラクトanti-CD19-CD28-41BB-ζ(CD28、4-1BB、CD3ζの3種のシグナルを同時に発生させる細胞内ドメインを有する)の作成はすでに完了し、ヒトprimary NK細胞に遺伝子導入し表面蛋白発現も確認されたが、同時に行った第2世代レセプター遺伝子導入と比較すると表面発現が低いようであった。一方、細胞障害活性については、レセプター発現が低いにもかかわらず第2世代レセプターと同等ないしはやや上回っていたため、さらなるドメイン追加(第3世代受容体)自体は有効なアプローチであることが示唆された。NK細胞機能はドナーによるinterindividual vailiabilityが大きく、最終結論にはさらにNK細胞ドナー数を増やして検討が必要と考えている。今後の方向としては現ベクターでさらに詳細なデータを増やすとともに、DAP10(NK細胞における重要なCoreceptor)シグナルドメインを用いた第3世代ベクターの作成も考慮中である。 項目iii)については、煩雑さによる実験系自体の不安定性があり検討が進みにくいため、別の戦略としてサイトカイン遺伝子同時発現ベクターによるNK細胞機能維持について検討している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
項目i)については上記の通り、対象患者数の偶然の減少から、研究進行が阻まれている。 項目ii)については、予定通りにベクター作成、NK細胞への遺伝子導入と機能解析が進んだものの、3番目のシグナル伝達ドメインの挿入によりレセプターの表面発現自体が落ちてしまうようで、予想したほどの機能向上が得られていない。さらにNK細胞ドナー数を増やして検討が必要ではある。その一方で、蛋白発現量が低いにもかかわらず細胞障害活性は同等からやや上回っていることからは、このアプローチ自体は有効であることが示唆されると考えている。今後の方向としては、表面蛋白発現に影響を与えにくいと予想されるCD28とは別の共刺激受容体のシグナル伝達部位を用いることが有効ではないかと予想された。 項目iii)についてはCD4+T細胞への遺伝子導入とNK細胞への遺伝子導入を並行して行うことの煩雑さにより、実験系自体の不安定性があり検討がなかなか進まないため(例:片方の遺伝子導入は型どおりうまくいっても、何らかの原因でもう一方にトラブルがあると全体の検討自体ができなくなる)、別の戦略を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
項目i)については、本年度中頃までは解析を続けるとしても、報告期限もあることから、一定のところで打ち切って論文投稿に向かう予定である。 項目ii)については、現ベクター(anti-CD19-CD28-41BB-ζ)についての検討を引き続き進める。その一方で、今後の方向としては、NK細胞における重要なCoreceptorであるDAP10シグナルドメインを用いた第3世代ベクターの作成が考慮している。 項目iii)については、計画を変更し、キメラ型受容体とサイトカイン(e.g.IL-2遺伝子)の同時発現ベクターについて検討することにした。
|