近年、T細胞やB細胞による獲得免疫と並んで自然免疫か注目され、Toll様受容体(TLR)の発見により、自然免疫の研究が進展し、IRAK4/MvD88欠損症などの自然免疫の異常による先天性免疫不全症が司定されるようになってきた。代表的な抗体産生不全症であるX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の原因遺伝子BTKがTLRのシグナル伝達に関連するとの報告があり、私たちはXLA患者単球由来樹状細胞におけるTLRリガンド刺激を検討したところ、TNF-a産生の低下を見出した(Taneichi et al.Cell Immunol 2008)。このことはXLAにおける感染症の重症化、特にエンテロウイルス感染症の重症化と関わっていると考察される。一方、骨芽細胞も樹状細胞と同様に単球由来であり、XLA患者における骨芽細胞の機能異常についても興味が持たれる。最近、イギリスのグループからBTK欠損骨芽細胞では炎症性サイトカインの産生が正常に比べて増加しており、骨吸収に関与しているとの報告がなされ年(Danks et al.J Bone Miner Res 2011)。今年度はBTK欠損しているXLA患者ならびに健常者の単求由来の樹状細胞ならびに骨芽細胞における遺伝子発現をマイクロアレイにて調べて、BTKが自然免疫系にいかに関与しているかを明らかにしたい。またXLA患者由来骨髄造血幹細胞を免疫不全症NOGマウスに輪注することによってヒトXLAモデルマウスの作成にも成功しており、このヒト化マウスを用いて、特に自然免疫で重要な働きをしていると考えられる腸管系における免疫学的・病理学的解析を行う。XLAにおける易感染性は免疫グロブリン産生低下のみならず、自然免疫の異常も関わっている可能性があり、本研究によって獲得免疫系と自然免疫系とのクロストークが明らかとなる可能性がある。
|