今年度に得られた成果は以下の通りである。 1)EBV-HLHにおけるEBV感染細胞の特徴; EBV-HLHではCD8+T細胞の単一クローンにEBVが感染、同一クローンの選択的活性化と増殖が起こることが確認された。感染細胞の「単クローン性」の確認は、flowcytometry法によるTCR Vβ鎖発現の多様性解析、ならびにTCR Vβ鎖のCDR3サイズ分布解析により行った。選択的EBV感染は、IMag beads法により単離したリンパ球亜群についてEBER-1 in situ hybridization法による感染細胞同定により行った。 さらに重要な知見は、これらの感染細胞が例外なくCD5抗原発現を低下、ないし欠如していたことである。CD5抗原発現の特徴は、強いHLA-DR発現とともにEBV-HLHにおけるEBV感染細胞の特徴であり、このような細胞集団の同定がEBV-HLH早期診断や治療反応性評価の指標となることが示唆された。これらの事実は、すでに論文に受理されている。 2)EBV-HLHにおける血清サイトカインプロファイリング; EBV-HLHにおける強い炎症反応と血球貪食の発症機構を明らかにするために、EBV-HLH急性期ならびに回復期における血清サイトカインプロフィールを解析した。その結果、急性期においては他の血球貪食症候群と同様、IL-6、neopterin、IL-18などが増加していることが示された。一方で、回復期のプロフィールはHLHの発症要因となる基本病態により差がある可能性が示唆されている。例えば、全身型若年性特発性関節炎のような病態では、急性炎症病態が終息しても、IL-18の高値のみが遷延するが、EBV-HLHでは全てのサイトカインはほぼ一様に正常化する。これらの違いはHLHを発症するに至る病態の違いを反映していると考えられ、その詳細は現在解析中である。この成果の一部も現在論文が受理されている。
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