本研究では、同種造血幹細胞移植における移植片対白血病(GVL)効果で中心的な役割を担う細胞傷害因子のTRAIL感受性について、転座由来の融合遺伝子産物の作用と、TRAIL受容体遺伝子プロモーターのメチル化状態との関連性、の2点を重点的に解析した。 このうち17;19転座型急性リンパ性白血病(ALL)では、転座由来のE2A-HLFがTRAIL受容体のDR4・5発現を誘導することを明らかにしているが、E2A-HLFはDR4・DR5遺伝子のプロモーターを活性化させるものの、この領域にはE2A-HLFが結合する塩基配列は存在せずE2A-HLFは間接的に作用していると想定された。一方、DR4とDR5遺伝子のプロモーター間では相同性が極めて低く、E2A-HLFが特定の転写因子を介さずに両者のプロモーターを活性化している可能性も含めて解析を進めている。 Philadelphia染色体(Ph1)由来のBCR-ABLがDR4・5遺伝子の発現を誘導することを明らかにしているが、Ph1陽性白血病細胞でImatinibによってBCR-ABLの活性を抑制するとDR4・DR5の発現も抑制される。この時に細胞周期の停止も誘導されることから、TGFβやover-growthによる細胞周期停止でのDR4・DR5発現の変化を解析したところ、DR4の発現のみ低下したことから、少なくともBCR-ABLによるDR4発現の維持は細胞周期促進効果と直結していることが示唆され、さらに解析を進めている。 プロモーターのメチル化との関連性に関しては、T細胞性ALLでのDR4・DR5の低発現への関与について報告し、11q23転座型ALLでのDR4・5低発現において、遺伝子のメチル化とともに転写活性自体が低いことも関与している可能性を見いだして解析を進めている。
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