Ph1陽性白血病細胞は、高頻度で細胞傷害因子のTRAILに対するdeath受容体であるDR4とDR5を発現し高いTRAIL感受性を示すことから、TRAIL-DR4/DR5系はPh1陽性白血病に対する同種造血幹移植後のGVL効果に関与している可能性が示唆されている。これまでの本研究では、1.imatinibおよびsiRNAを用いてPh1陽性細胞株および臨床検体のBCR-ABLの活性を抑制するとDR4/DR5の発現が低下すること、2.BCR-ABLをPh1陰性白血病細胞株に遺伝子導入するとDR/DR5発現が誘導されること、3.imatinibでPh1陽性細胞を前処理するとTRAIL感受性が低下することを明らかにしてきた。 そこで本年度の研究では、imatinibおよびsiRNAによるPh1陽性白血病細胞株におけるDR4/DR5発現の抑制が細胞死誘導による二次的な変化ではないことを、カスパーゼ阻害剤の添加によって細胞死を抑制してもDR4/DR5発現が抑制されることで証明した。また、imatinibによるPh1陽性白血病細胞株のTRAIL感受性低下がDR4/DR5の発現抑制を介する現象であることを、imatinibのDISC(death-inducingsignahngcomplex)分子発現への影響がTRAIL感受性低下に関係している可能性が低いことからも確認した。さらにBCR-ABLの下流でMAPK経路がDR4/DR5発現に関与していることを、ERK1のsiRNA導入によってDR4/DR5発現が低下する事で確認した。こうした解析結果は、BCR-ABLがPh1陽性白血病におけるDR4/DR5発現に直接に関与していることを示しており、この研究成果は2012年4月にOncogene誌にacceptされた。
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