研究概要 |
神経芽腫は小児固形腫瘍で最も多い悪性腫瘍で、1歳以降に発症する場合は外科的治療・化学療法・放射線療法を使用した集学的治療を行っても予後は非常に不良であり、新しい治療法の開発が強く望まれています。これまで申請者らは、マウスを用いた研究でポリオウイルス(以下PV)は神経芽腫細胞に対して強い抗腫瘍活性を持ち、マウスに移植した腫瘍が消失する事を報告してきました(H.Toyoda et.al.International Journal of Oncology 2004)(H.Toyoda et.al.Cancer Research 2007)。これまでの研究で申請者らが用いた神経芽腫細胞株は、マウス神経芽腫細胞株(Neuro-2a)にCD155をトランスフェクトして発現させた細胞(Neuro-2a^<CD155>)であるため、強制発現させたCD155が抗腫瘍免疫の標的分子になっている可能性があります。そこでCD155を発現していないマウス神経芽腫細胞株(Neuro-2a)を、すでに抗腫瘍免疫を獲得したCD155tgA/Jマウスに移植し腫瘍の形成が認められるか否かを検討したところ、腫瘤形成しませんでした。なお、抗腫瘍免疫を獲得していないCD155tgA/JマウスにNeuro-2aを移植した場合、腫瘤形成は認められました。このことから、我々がトランスフェクトしたCD155は抗腫瘍免疫の標的分子になっていないことが明らかになりました。次にin vitroでの抗腫瘍効果の実験を行いました。Neuro-2a^<CD155>とNeuro-2aに対し抗腫瘍免疫を獲得したCD155tgA/Jマウスから脾細胞を採取し、神経芽腫細胞株(Neuro-2aとNeuro-2a^<CD155>)と混合培養したところ、上清中LDHの上昇が認められました。しかし、抗腫瘍免疫を獲得していないCD155tgA/Jマウスの脾細胞と神経芽腫細胞株を混合培養した上清中のLDHは上昇していませんでした。さらに、CD4,8,NKのそれぞれの細胞を脾細胞から除いて腫瘍細胞障害実験を行いましたところ、CD8細胞を除去したマウス脾細胞は神経芽腫細胞株に対し抗腫瘍効果を示しませんでした。このことから、神経芽腫をPVで治療することにより抗腫瘍免疫が誘導されることがin vivoとin vitroの実験で証明され、CD8T細胞が抗腫瘍免疫獲得に重要であることが証明されました。
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