研究概要 |
B細胞、NK細胞、形質細胞様樹状細胞を欠損する新規免疫不全症の責任遺伝子の同定に向けて引き続き以下の研究を行った。まず血球分化に関連する遺伝子であるIKAROS、BCL11A、EBF1、PU.1、E2A、FLT3、FLT3Lおよびこれらの分子と関連・結合する分子の遺伝子の塩基配列を決定したが異常を認めなかった。GATA2遺伝子についても検討を行ったが異常を認めなかった。CD34陽性細胞および骨髄系樹状細胞のマイクロアレイ解析で健常者と発現量の異なる遺伝子群について検討を行った結果、TdT遺伝子など有意に発現量の異なる遺伝子群が判明したが、各遺伝子の塩基配列に異常を認めなかった。他に同様の臨床像を呈した1例が確認されたことから、合計2名の患者について次世代シーケンサーによるエキソーム解析を理化学研究所と共同で行った。1例目はRoche社の方法を用いて解析を行った。23,079の遺伝子変異から、イントロン部位、UTR部位、synonymous変異を除いた結果9,309の変異が候補として残った。さらにdbSNP135のdata baseからSNP変異を除いた結果823の変異が残った。日本人ゲノムNA18943を参考に解析し、最終的に823の候補遺伝子が残った。他の1例についてはIlluminaの方法で解析した。90,674の変異が認められ、同様な手法で絞り込んだ結果、最終的に542の候補遺伝子が残った。これらの中から分子機能を考慮して一部を選択し、塩基配列を決定したが、家族や健常者にも認められる変異であった。また2名の患者で共通して変異が認められた遺伝子はSIRPAのみであったが、この遺伝子の塩基配列を決定したところ、健常者や無症状の両親においても遺伝子変異が認められ、責任遺伝子とは考えられなかった。
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