研究概要 |
目的:気道炎症に対する脂肪酸代謝物の影響を調べるために,引き続き気道上皮培養細胞を用いた研究を中心に遂行した.気道上皮から産生される活性物質であるsemaphorin 3Aの発現調節の機序と,気道上皮から産生されるsemaphorin 3Aの好中球に対する作用について解析を進め,アラキドン酸代謝物がその作用をどのように修飾し気道炎症の制御に関与しているかを検討した.今年度は気道上皮細胞をより生理的な状態で培養する方法についても検討した. 方法:気道細胞の培養は従来のplate上に培養液を満たして行う方法に加えて,air-liquid interface (ALI) culture systemを試みた.活性分子の発現についてはnRNA発現を半定量的PCR法,蛋白の発現はフローサイトメトリーとwestern blotting法免疫組織染色法をもちいて検討した. 結果:ALI cultureシステムでは,通常の培養に比べて,生理的な気道細胞に近い形での培養を行うことが可能であることが確認できた.気道上皮細胞株はsemaphorin 3Aを恒常的に発現しpoly(IC)刺激はその発現を増強した.また,肺胞洗浄液中の気道上皮細胞においてもsemaphorin 3Aが発現していることを確認できた.一方,好中球はsemaphorin 3A受容体であるNRP1とPlexinAのmRNAを恒常的に発現していた.semaphorin 3Aで好中球を刺激してもapoptosisや遊走に対する作用は認められなかった.一方,semaphorin 3AはPMNの貪食作用を亢進し,LTB4はその効果をさらに増強した.機序としてphosphtidylinocitol-3 kinaseの系を介している可能性があることが明らかとなった.考察と結論:気道上皮由来のsemaphorin 3Aが炎症細胞である好中球の活性化に関与し,脂肪酸代謝物であるLTB4がその作用を増強することより炎症の調節を行っていることが明らかとなった
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