研究概要 |
造血細胞移植術は広く治療法とし確立され、白血病などの難治性疾患患者の救命に寄与している。適切なドナーの基準は組織適合性で測られてきたが、寿命があるヒトの細胞を移植するための問題点は未解明である。本研究では、ヒト造血幹細胞の加齢にともなう変化を分化関連転写因子活性と細胞表面マーカーで解析し造血細胞の加齢(老化)評価方法を確立する。その方法を用い、移植細胞は新しい体内で本来の寿命を全うできるのかなど、小児患者に成人ドナー細胞を移植することの長期的問題点を明らかにする。 造血幹細胞の加齢を細胞群として前駆細胞の比率(リンパ球/骨髄球)を検討する手法を用い、初年度にはHOXB4,Ikaros,GATA1を用いて解析する方法を確立した。その結果は、6歳小児の骨髄CD34陽性細胞の比率を1とした場合、20歳以上の成人例では0.32±0.15(n=7)と明らかに骨髄球系が優位であった。 本年度は検索対象を拡大してデータの蓄積を行う。成人細胞についてはドナーや市販の研究用細胞を用い、小児患者では倫理委員会の規定にそった説明と同意の下に提供を依頼する。各年齢層のドナーあるいは患者から提供をされた純化造血細胞で、i)細胞内転写因子mRNAの測定、ii)リンパ球系/骨髄球系の比率の算定を実施する。そのデータから造血幹細胞が加齢に伴ってどのように変動するかを検討し、造血幹細胞年齢を計測する方法を確立する。その上で造血細胞移植術前後の小児患者の細胞年齢を推定し、ドナーの年齢による造血細胞移植術への影響を評価する。
|