造血幹細胞は加齢とともにリンパ球系へ分化する細胞が減少することが想定されている。この現象を利用して造血細胞移植術による造血幹細胞の加齢が進行するかどうか、また成人細胞を小児へ移植した場合に新しい環境での数十年単位での機能維持が可能かどうかを評価することが本研究の目的である。 造血幹細胞中のリンパ球系細胞へ分化しつつある細胞と骨髄球系細胞へ分化しつつある細胞の比を遺伝子発現量の定量的測定で算出し、細胞提供者の年齢との関係を検討した。具体的には骨髄細胞から造血幹細胞のマーカーであるCD34抗原を利用して免疫磁気ビーズ法で純化し、細胞内の参照遺伝子GAPDHからみたリンパ球系遺伝子IKARSと骨髄球系遺伝子CEPBPAαの発現量をReal-time PCR法で算出した。凍結細胞も含む種々の年齢の骨髄CD34陽性細胞を対象としているので、細胞の条件を補正する目的で、一つの細胞(8か月児から提供)の各遺伝子量を1と対象細胞の各遺伝子発現量との比で算出し、評価対象細胞のIKAROS/CEPBPAα比を求めた。 月齢3か月~49歳までの骨髄CD34陽性細胞41検体では、平均0.369(0.02~0.9)であった。有意確率は0.217ながら相関係数は-0.197で年齢とともに減少傾向であることが確認された。今後は50歳以上の高齢者層の細胞の評価を行う事、マーカーとする遺伝子の選択が適正かどうかが課題になる、その後に、造血細胞移植前後の変化が検討できる予定である。
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