自然発症するアトピー性皮膚炎ミュータントspadeマウスにおける飼育環境の変化による疾患発症の変化について、無菌化による影響について検討を行ったところ、SPF環境では生後7週から8週令で皮膚炎を発症するのに対し、無菌状態では生後12週から14週まで皮膚炎発症が遅延した。さらに、SPFマウス皮膚における細菌培養の結果、常在細菌の一つのStaphylococcus Aureusが疾患発症とともに増殖することを確認した。現在、ヘテロマウス耳へのProteinA塗布による疾患発症と増悪への影響を観察中であり、同時にマイクロアレイによるゲノム解析の準備を行っている。 また、同時にMyD88、TLR4、およびTLR9の欠損動物とspadeマウスのダブルミュータント作製も進めており、これらの動物における皮膚炎発症過程の観察を開始している。 Keratinocyteの細胞培養系でのChitinasae3like1の機能を観察するために培養系を樹立したが、二次元培養系ではChitinase3like1の発現を認めることができなかった。このためにin vivoでの感染実験及び菌体成分塗布による変動の観察のアッセイ系を開発中である。この系に適応させる予定のChi3l1の特異的機能阻害抗体は未だ得ることができないために引き続き継続して抗体作製に取り組んでいる。 Chi3l1を皮膚で過剰発現するトランスジェニックマウスは現在遺伝子導入の準備が整い、製作待ちである。Chi3l1のノックアウトマウスにいついてはコンストラクトの作製に時間を要しており、引き続き作製を続ける。 なお、Spadeマウスに関してはサイトカイン下流の信号伝達分子Xの下流で働く信号伝達分子Yのプロモーター結合領域について検討したところ、Chi3l1のプロモーター領域に複数の結合配列を確認できた。Chi3l1プロモーター領域の同定を現在新たに進めている。 以上の進捗状況により、来年度中には他の分子のノックアウトマウス、Chi3l1のトランスジェニックマウス、Chi3l1のノックアウトマウスとの交配によるChi3l1および自然免疫系の要因がアトピー性皮膚炎発症及び進行に及ぼす影響を明らかにできるものと思われる。
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