神経芽腫の予後決定候補遺伝子BMCC1の神経系および神経芽腫における役割を明らかにすることを目的とし、以下の三項目を中心に研究を行い、その成果を得た。 1;BCHドメインを中心としたBMCC1の機能解明。 2;TrkAの結合を介したBMCC1によるシグナル伝達経路の制御機構の解明。 3;神経芽腫の発がんモデルマウスとして期待されるBMCC1-/-ノックアウトマウスの解析。 1および2;前年度に、BMCC1は、BCHドメインを介してCdc42に対するGAP活性を持つこと、TrkAによってリン酸化を受けるとこの活性が低下することを明らかにした。今年度は、この制御に関わるBMCC1のTrkAとの結合部位およびTrkAによるリン酸化部位について検討を行った。全長およびC末側の欠損変異体BMCC1をTrkAと共にHEK293細胞にて共発現し、免疫沈降法により解析したところ、TrkAはBCHドメインではなくC末端より850-350アミノ酸の領域と結合することを見出した。さらにGST-BMCC1欠損変異体を用いてインビトロキナーゼアッセイを行ったところ、TrkAによるリン酸化サイトがTrkA結合領域内に2カ所存在することを明らかにした。 3;前年度に樹立した2系統のBMCC1+/-キメラマウスは129バックグラウンドであることから、C57BL/6Jバックグラウンドへの戻し交配を行った。同時に、ターゲッティングベクターが導入されたESクローンを選択する際の目印として挿入したNeoマーカー遺伝子を削除するために、Cre遺伝子を発現するトランスジェニックマウスとの交配を行った。BMCC1ノックアウトマウスの樹立は世界に前例がなく、今後神経発生お芸び神経芽腫の形成におけるBMCC1の機能をin vivo解析より明らかにするための非常に有効な手段となる。
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