研究概要 |
我々は、ChIPアッセイによってMYCNが直接Bmi1プロモーターに結合することを見出し、MYCNがBmi1の転写を活性化することをルシフェラーゼアッセイで明らかにした。ルシフェラーゼァッセイではMYCNが結合するE box配列に変異を導入して、転写活性が低下することを確認した。また、テトラサイクリンによるMYCNの発現誘導株Tet21/Nを用いて、MYCN誘導が転写レベルでBmi1を誘導すること、Bmi1の蛋白レベルでの増加に伴い同じPolycomb複合体PRC1に含まれるRing1bが蛋白レベルで増加することを見出した。 さらに、Bmi1が神経芽腫細胞の増殖を調節する重要な因子の一つであることを、Bmi1過剰発現株で神経芽腫細胞株の増殖が促進されることをWST-8アッセイおよび軟寒天培地中でのコロニー形成アッセイで確認した。Bmi1をノックダウンした細胞では、これらのWST-8アッセイおよび軟寒天培地中でのコロニー形成アッセイで増殖能・コロニー形成能が低下することも示された。この増殖・造腫瘍調節にBmi1を含むポリコーム複合体によるクロマチン修飾の制御が重要であるというデータを得、Bmi1を含むポリコーム複合体によるクロマチン修飾の制御がどのような遺伝子に及び、神経芽腫細胞の発がん制御にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするかを検討した。その結果、Bmi1の転写抑制の標的として、がん抑制遺伝子KIF1BbとTSLC1が重要であることを発現遺伝子のチップアッセイによる網羅的解析で見出した。Bmi1の過剰発現株とノックダウン株を用いて、Bmi1がKIF1BbとTSLC1の転写を阻害していることを複数の神経芽腫細胞株を用いて明らかにした(Ochiai H et al., Oncogene, 2010, In press)。現在更なるBmi1のターゲット検索を網羅的に行っている。
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