研究課題
C型インフルエンザウイルスのNP遺伝子分節にプライマーとTaqManプローブを設定したリアルタイムPCR法の評価を小児の臨床検体を用いて行った。MDCK細胞による分離法と比較したところ、感度は100%、特異度98.5%、陽性適中率66.7%、陰性適中率100%だった。細胞培養陽性の検体の平均遺伝子コピー数は3.97×10^8コピー/ml、細胞培養陰性の検体では2.18×10^6コピー/mlで、コピー数に有意な違いを認めた。リアルタイムPCR陽性で細胞培養陰性の検体の88%が10^7コピー/mlよりも少ないことから、本研究で確立したリアルタイムPCR法が、ウイルス量の少ない検体でのC型インフルエンザの診断に有用であることが示された。リアルタイムPCR陽性で細胞培養陰性の検体が本当に陽性であるかどうかを確かめるために、同じ臨床検体を用いてMDCK細胞よりも感度の良い発育鶏卵羊膜腔での感染性ウイルス粒子数の測定を行った。細胞培養陽性の検体の平均感染性粒子数は5.43×10^5EID_<50>/ml、細胞培養陰性の検体は3.67×10^2EID_<50>/mlだった。10^5コピー/mlよりも少ない検体では発育鶏卵での増殖も認めなかった。以上の結果から、臨床検体中のC型インフルエンザの遺伝子コピー数が10^7コピー/ml以上有れば細胞培養での分離ができる十分な感染性ウイルスがあり、10^5/mlよりも少なければ分離できるだけの感染性ウイルスはなく、10^5から10^7/mlの範囲はその中間の感染性ウイルス量になることが判明した。この結果から、コピー数をもとに感染性粒子の数を推測することが可能となり、リアルタイムPCRでC型インフルエンザの診断を行う際の病原ウイルスかどうかの判定や重症度の推測に寄与するものと期待される。
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