細胞外マトリックス蛋白質バーシカンは動脈硬化や血管の再狭窄において大きな役割を果たしている一方で、胎生期の心血管形成過程においても非常に重要な働きをしていると考えられている。hdfマウスは細胞外マトリックス蛋白質バーシカンをコードするCSPG2遺伝子の発現が障害されているので、このマウスを用いて胎生期心血管形成におけるCSPG2遺伝子の役割について検討した。内皮細胞マーカによる免疫染色胎生9.5日の胎仔を採取し、代表的血管内皮等のマーカーであるFlk-1とPECAM-1による免疫染色を行い、hdfホモ胎仔と野生型胎仔の血管内皮について比較検討を行った。その結果hdfホモでは野生型と比較して血管網の構築に明らかな異常が認められたので、バーシカンが胎生期の血管形成に重要な役割を持っていることが示唆された。血管平滑筋のマーカー等での免疫染色を追加して行い、更にバーシカンの胎生期の血管形成における役割を明らかにしていく予定である。Ink注入胎生9.5日の胎仔を胎盤と一緒に取り出し、胎盤から臍帯を通して胎仔にInkを注入し、胎生期の血管を可視化する実験を行った。可視化されたhdfホモの胎生9.5日の胎仔の血管には多くの断絶が認められ、免疫染色と符合する結果と考えられた。In situハイブリダイゼーション二次心臓領域の代表的なマーカーであるIs1-1のプローブでwhole mount in situハイブリダイゼーションを行った。その結果hdfホモの胎生9.5日の胎仔の二次心臓領域は野生型と比べ矮小化していると考えられる結果が得られ、細胞外マトリックス蛋白質バーシカンは心臓の形成にも重要な役割を果たしていることが示唆された。
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