細胞外マトリックス蛋白質バーシカンは動脈硬化や血管の再狭窄において大きな役割を果たしている一方で、胎生期の心血管形成過程においても非常に重要な働きをしていると考えられている。hdfマウスは細胞外マトリックス蛋白質バーシカンをコードするCSPG2遺伝子の発現が障害されているので、このマウスを用いて胎生期心血管形成におけるCSPG2遺伝子の役割について検討を行った。 アポトーシス及び細胞アッセイ増殖胎仔全体及び凍結切片のアポトーシスに関してLysoTracker□ Red DND-99およびApopTag□ Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit(Chemicon)を用いて検討を行い、ホモ接合体の頭部間充織に於いてアポトーシスが著明に増加していることを見出した。一方で細胞増殖はanti-phospho histone H3抗体(Upstate)を用いた免疫染色によって検討し細胞増殖の低下を認めた。 神経提細胞系譜の解析既に神経提細胞マーカーであるCrabp1の発現がhdfマウスで低下していることを見出しており、神経堤細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するP0-CreとCAG-lox-CAT-lox-RFPとの掛け合わせを行い、神経堤細胞の追跡を試みた。実際に野生型では神経提細胞群にRFPの発現を確認することができた。しかしながらhdfマウスと掛け合わせてホモ接合体で神経提細胞を追跡する系は掛け合わせが煩雑であったためこの系ではデータは得られていない。そこでhdfホモ接合体における神経提細胞系譜の追跡に関してはCrabp1の他の神経提細胞マーカーであるErbB3とCdh6のin situ hybridizationのデータで補完した。既に得られている結果と併せてCSPG2遺伝子のコードするバーシカンが胎生初期に頭部間充織において細胞を細胞死から保護し、神経堤細胞の維持あるいは遊走に重要であることが示唆された。
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