【研究の目的】Epstein-Barr Virus (EBV)関連リンパ増殖性疾患の診断・発症病理の解明には、EBV感染細胞の定量と同定が必須である。これまで、侵襲の強い病理組織診による感染細胞同定法は確立されているが、末梢血中を用いた再現性の高い方法は無かった。我々はEBV encoded small RNA (EBER)特異的プローブを用い、細胞表面抗原とEBERを連続的に染色するFISH法を確立した。本年度は、移植後リンパ増殖症が疑われた患者に対して、FISH法を用い血液検体中のEBV感染細胞の同定と定量を試みた。 【材料と方法】臓器・造血幹細胞移植後に、リアルタイムPCR法により血液中のEBV-DNA量増加が認められ、移植後リンパ増殖症が疑われた8症例を対象とした。症例の内訳はEBV関連移植後リンパ増殖症4例(骨髄移植後3例、臍帯血移植後1例)、移植後高EBV血症4例(いずれも生体肝移植後)。FISH法により、末梢血単核球の表面抗原染色および核内のEBER染色を連続して行った後、flow cytometoryにて解析した。 【結果】全例で感染細胞の定量が可能であり、0.05~1.7%の末梢血リンパ球がEBV陽性であった。感染細胞の同定が可能であった症例では、CD20陽性B細胞にEBVの感染を認めた。細胞表面抗原よりメモリーB細胞が感染の主体であると考えられた。骨髄移植後の1例ではリツキサンの使用したところEBV-NAは減少した。 【考察】FISH法により、非侵襲的な方法で移植後リンパ増殖症におけるEBV感染細胞の同定/定量が可能であった。臓器・造血幹細胞移植後における免疫抑制状態では、しばしばEBV関連リンパ増殖症が発症する。本症は、進行早く無治療な場合予後不良な疾患であったが、近年では抗CD20ヒト型モノクローナル抗体(リツキサン)などの分子標的治療剤が用いられるようになり予後が改善している。本法は移植後リンパ増殖症の早期診断、治療法の決定につながる有用な方法であると考えられた。
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