先天性(遺伝性)ネフローゼ症候群(以下ネ症)に罹患した日本人患者より同定したNPHS2遺伝子異常(蛋白はポドシン)をもとに、ポドシン蛋白の機能発現に必要な蛋白(特にポドシン蛋白を輸送するのに必要な可能性のある蛋白)を同定し、性質を明らかにすることで蛋白尿発症機序を解明し、蛋白尿を発症する新たな病因の探索にもつなげることを目的に、研究を行っている。ポドシンに結合する蛋白を免疫沈降法、質量分析法を利用して同定し、その中に輸送蛋白xが存在した。輸送蛋白xが実際にポドシンと結合するかを両方の蛋白からの免疫沈降法により証明した。また、糸球体内皮細胞などのマーカーと輸送蛋白xの2重染色を行ったあと共焦点顕微鏡で解析し、xがポドサイトに存在することを証明した。siRNAでxの発現を抑制したところ、遺伝子導入により発現させたポドシンの細胞膜での発現が著明に低下し細胞形態の変化も伴った。遺伝性ネ症に罹患した日本人患者に発現する異常ポドシン蛋白(R168H R168C)は細胞膜への発現が非常に低下するが、xを培養細胞内で過剰発現させたところ、それが改善した。これらから、輸送蛋白xは、ポドシンの細胞膜への輸送に関係すると考えられた。
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