研究概要 |
本共同研究に参加する国内29施設に2009年5月までに急性脳症、熱性けいれん(FS)、発熱に伴うせん妄・異常行動・幻覚、インフルエンザのために入院した小児85名を解析した。尿中β2マイクログロブリン(BMG)は、尿中クレアチニンと同時に測定しクレアチニン比(μg/gCr)を算出した。NK細胞上のCD69の発現は、末梢血CD56陽性細胞中のCD69陽性細胞の割合をフローサイトメーターで測定した。尿中BMGは、急性脳症、インフルエンザ+複合型FS、インフルエンザ+せん妄・異常行動・幻覚,インフルエンザ+単純型FS,インフルエンザの順に高い傾向がみられた。急性脳症の中では関連したウイルスによる差異はみられなかった。尿中BMGの異常高値は、hemorrhagic shock and encephalopathy,インフルエンザ脳症、HHV-6による急性壊死性脳症の症例でみられ、いずれも死亡または最重度の後遺症を残していた。以上の結果より、尿中BMGが急性脳症の早期診断や予後予測に有用である可能性が示唆された。NK細胞上のCD69の発現は、インフルエンザ脳症で亢進していたが,それ以外の脳症、インフルエンザ+複合型FSとほぼ同程度であった。 手足口病に合併する特殊な脳炎である菱脳炎(小脳炎+脳幹脳炎)は、中枢神経系への親和性が強いエンテロウイルス71(EV71)でおこる。脳症・脳炎の原因検索の一環として本疾患症例のウイルス学的検索を行い、EV71ではなくコクサッキーウイルスA16を初めて同定した。これはエンテロウイルスの神経病原性を考える上で興味深い知見と考えられた。
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