研究課題
本邦では、2008年12月にインフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)ワクチンが開始されたが、主に1990年代に導入された西欧諸国では、近年vaccine failureが報告されており、これにはHib葵膜遺伝子capb領域の3コピー以上の重複による細菌側要因と、抗体のavidity低下による宿主側要因が関連するとされている。本邦においては、これらの要因に関してこれまで研究がなされておらず、我々のグループで、全身感染症(髄膜炎、敗血症など)を発症した小児患者から2004~2008年に検出されたHib24株について検討したところ、capb領域の3コピー以上の重複が4株(16.7%)で検出された。これはヒブワクチンを導入して間もない1990年代初頭の英国のデータ(10.1%)より高値であり、ヒブワクチン既接種者がまだ少ない本邦でも、vaccine failureに関連する要因を保有するHibが存在することが明らかとなり、論文として報告した。さらに今回の研究において、2011年までに検出された株も含めて、鹿児島県で発生したHib髄膜炎患者由来株牽対象にHib遺伝子のcapb領域の重複を調査したところ、ワクチン導入前後で増加傾向(2008年以前9.5%、2009年以降23.1%)が認められた。これは、本邦及び世界的に同様の報告のない、ワクチン計画において貴重な情報と考えられる。今後、ワクチン導入によりvaccine failureに影響するHibが選択的に増加する可能性もあり、本邦のみならず世界的なワクチン計画上の課題として、これら2つの要因の継続的な調査と解析が必要と考えられる。
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FEMS Immunology & Medical Microbiology
巻: 63 ページ: 10-15
10.1111/j.1574-695X.2011.00821.x