研究概要 |
ヒトパルボウイルスB19は5,596塩基よりなる1本鎖DNAウイルスであり、骨髄中の赤血球系前駆細胞(CFU-E、BFU-E)から赤芽球までのCD36陽性細胞が感染許容細胞であることが知られている。1993年に感染を介する受容体は血液型の1種であるP抗原であることが報告された。しかしながら、P抗原は赤血球前駆細胞以外にも心筋細胞、肝細胞、血管内皮細胞の表面に存在しており、それにもかかわらずこれらの細胞内でのウイルス増殖は認められていないことより、P抗原を有することは感染許容の必要条件ではあっても十分条件ではない。B19の感染が成立するには細胞内部の複雑な状況が必要であり、それが感染宿主細胞の極端な限定性に結びついているといえる。B19ウイルスは5,596塩基という非常に短いゲノムを3つのopen reading frameにより(部分的にオーバーラップさせつつ)最大限に利用し、1つのpromotorと2つのpolyadenylation siteのみで転写を調節している。このように非常に許容範囲の狭いゲノムと考えられるが、実際はDNAウイルスとして、これほど点変異(突然変異)を認めるウイルスはまれであると考える。また、B19ほど多彩な病態に関連しているウイルスは他にはない。この点に関して、ゲノム変異が感染様式および病態へどのように関連しているかを解明していくことを研究の目的とする。 平成21年度以降、B19ゲノム上の変異に関して、主にVP1 unique regionと呼ばれる中央の約1200塩基に関する部位の検討を終え、さらにその左側にあるNS部位と右側にあるVP2部位に関して検討をすすめている。変異をゲノムに導入する基礎実験を平成21年より開始しているが、引き続き平成23年度も続行しているところである。
|