Glcci1のリガンドとして我々が同定したdynein light chain 8(Dlc8)とGlcci1との相互作用が、どのようにT細胞のアポトーシスに関わるかを詳細に検討した。まず、アポトーシスに関わる分子のなかで、Dlc8との蛋白相互作用が示唆されているP21-protein activated kinase -1(PAK1)についてGlcci1発現細胞を用いて免疫沈降を行った結果、Glci1とPAK1とのさらなる蛋白結合の存在が証明された。さらに、既報蛋白のDlc8との蛋白結合ドメインを参考にGlcci1の変異型コンストラクトを作成し、培養細胞内での蛋白発現実験を行ったところ、変異型Glcci1はDlc8との著明な結合性の低下をみとめる一方、この変異型は、野生型に比してむしろ極めて高いPAK1結合性を示した。これにより、Glcci-Dlc8-PAK1の3分子の蛋白相互作用の存在が初めて明らかになった。さらに、リコンビナントGlcci1、Dlc8、PAK1と^<32>P-ATPを混合させた試験管内リン酸化実験を行ったところ、Glcci1はPAK1により確かにリン酸化を受ける基質であり、またPAK1のDlc8へのキナーゼ活性を阻害することが明らかになった。本結果とこれまでの結果から、Glcci1は、まずPAK1によりリン酸化をされることにより、PAK1のDlc8へのキナーゼ活性を阻害する。その結果、非(脱)リン酸化Dlc8は2量体形成ができず、その結果tubulin上での安定化能が破綻し、すでに結合しているアポトーシス誘導因子Bimのミトコンドリアへの遊離が発生し、ミトコンドリア障害すなわちアポトーシスに至ると結論された。
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