研究概要 |
本研究の目的は、微量タンパク質の発現変動を検出可能にする蛍光色素を用いたプロテオミクスの手法により、動脈管の酸素感受性に関わるタンパク質を網羅的に探索し同定することである。本年度は、酸素濃度を感受して発現変動するタンパク質の検索と同定を実施した。 方法:日本白色家兎満期胎児の動脈管(DA)および肺動脈(PA)を、高濃度窒素(95%N_2-5%CO_2)又は高濃度酸素(95%O_2-5%CO_2)飽和Krebs-Henseleit緩衝液(pH7.4)中で37℃で培養し試料とした。各血管試料を8Mウレア、4%CHAPS、10mM Tris(pH8.0)を含む可溶化用緩衝液によりタンパク質を抽出可溶化した。CyDye(ミニマル蛍光色素、GE Healthcare)で抽出タンパク質を標識し、比較する試料と一括して同一ゲル上で等電点/SDS二次元電気泳動を行い、発現量の変動を比較した。二次元電気泳動により分離されたタンパク質スポットを自動ゲル切り出し装置(EXQuest, BIORAD)により切り出し、洗浄脱水後ゲル内トリプシン消化を行い、このペプチド混合物を抽出濃縮しMALDI-TOF-MS試料とした。Autoflex II MALDI-TOF/TOF-MS(ブルカー・ダルトニクス)によりMSおよびMS/MS質量分析を行い、検索ソフト(MASCOT)により同定を行った。 結果:低酸素条件で発現が増加したspotは、動脈管で4個、肺動脈で12個であった。高酸素条件で発現が増加したspotは、動脈管で11個、肺動脈で3個であった。分子量の変動を示したspotは、動脈管で2個、肺動脈で2個であった。質量分析の結果、これらの変動を示すタンパク質には抗酸化作用や酸化ストレスに関係するもの(ペルオキシレドキシンなど)が認められた。これらの特徴的なタンパク質について、次年度はタンパク質相互作用の検討に進む。
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