研究概要 |
本研究の目的は、微量タンパク質の発現変動を検出可能にする蛍光色素を用いたプロテオミクスの手法により、動脈管の酸素感受性に関わるタンパク質を網羅的に探索し同定することである。未熟児の動脈管は生後の血中酸素濃度の上昇にも関わらず、収縮能が弱いことが知られている。本年度は、未熟成熟動脈管・肺動脈に発現するタンパク質を比較することにより、酸素感受性に関わるタンパク質を探索した。 方法:胎生21日胎仔(超未熟):74匹、27日胎仔(未熟):20匹、30日胎仔(成熟):20匹、新生仔:10匹の家兎の動脈管(DA)および肺動脈(PA)をプールし、分析試料とした。各血管試料からRNA成分を抽出後、タンパク質をアセトン沈殿で回収し、8Mウレア、4%CHAPS、10mM Tris(pH 8.0)を含む可溶化用緩衝液によりタンパク質を可溶化した。胎生21, 27日および生後2日試料をIC-3、胎生30日試料をIC-5を用いて蛍光標識し、同タンパク質量のIC-3とIC-5標識試料を混和し同一ゲル上で等電点/SDS二次元電気泳動を行い、発現量を比較した。 結果:胎生21日と30日を比較すると、30日より21日で発現量が多いタンパク質は(以下21日>30日と記載)は、DAに34、PAに42あり、21日<30日は、DAに24、PAに20あった。27日と30日を比較すると、27日>30日は、DAに10、PAに13あり、27日<30日は、DAに0、PAに6あった。生後2日と胎生30日を比較すると、生後2日>30日は、DAに12、PAに24あり、生後2日<30日は、DAに1、PAに0あった。また、21日では血清アルブミンがほとんど作られていないことがわかった。本研究により、未熟・成熟血管におけるタンパク質の発現は質と量の面で異なる点が多いことが示された。現在、質量分析法によりこれら変動タンパク質の同定を進めている。
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