Foxc2ノックアウトマウス(オリジナル系)をC57BL/6J(B6)およびICRに戻し交配し比較した。胎齢17日齢の胎仔では、Foxc2欠失個体の心血管奇形の表現型に3系統間で差が認められ、オリジナル系が総動脈幹遺残症または大動脈など最も重篤で、B6系では大動脈弓離断症を主な異常として認めたが、ICR糸では軽度の大動脈狭窄を認めたのみであった。 このため、鰓弓動脈のパターンの解析を目的に、胎齢10.5日胚の血管内インクインジェクションを行った。ICR系では、鰓弓動脈の形態は野生タイプの個体と差異を認められなかったが、B6およびオリジナル系の10.5日Foxc2欠失胚では第4鰓弓動脈の低形成が認められ、第4-6鰓弓動脈間が広がり、第4咽頭嚢の拡張が示唆された。さらに、第5鰓弓動脈と診断される低形成な鰓弓動脈が認められる個体をオリジナル系で見いだしている。心血管系においては、このような重篤度における系統差を認めている一方、既に報告されている体節形成異常による体躯の短縮や口蓋裂の発生に関しては、明らかな系統差は認めなかった。 これらの結果から、神経堤細胞の遊走および二次心原基から心流出路を形成する過程が系統間で差が生じている可能性が考えられ、関与する遺伝子の発現解析のためにFoxc2欠失胎仔のサンプル収集を行うと同時に、それら関連遺伝子のRNAプローブの分与を受けたところである。 さらに、妊娠中の母体の高脂血漿が先天性心疾患のリスクを高める可能性が臨床データから示唆されたため、最も心血管異常の軽度のICR系のヘテロ母獣に高脂肪食を与えたところ、Foxc2欠失胎仔においてB6系胎仔と同様に大動脈弓離断を伴った個体が出現した。これは母体の状態がFoxc2欠失胎仔の発生過程に影響を与える可能性を示すと考えられ、今後検討の余地がある。
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