心血管発生に関与するハプロ不全を特徴とする遺伝子の一つ、Foxc2を欠失するマウスでは、胎仔心大血管異常の重篤度に系統差が認められることを、我々は見いだしている。本年度は、発生過程における鰓弓動脈壁の形態学的変化を分子生物学的および細胞生物学的手法を用いて明らかにするともに、Foxc2と関連して発現するFoxc1遺伝子の変異の有無および鰓弓動脈のパターン変化に関与する既知の遺伝子の発現動態を解析することを目的とした。 鰓弓動脈と発現遺伝子の解析には、分与された129SvEvxSwiss Blackの系(original line)およびC57BL/6またはICRに戻し交配をした系(それぞれB6・F、ICR・F)の3系統を用い、各系統における胎齢10.5日マウス胚を用いた。発生過程における鰓弓動脈壁の変化については、第IV鰓弓の発生にcriticalなTbx1遺伝子の発現を中心に解析を行った。また、original系におけるFoxc2欠失胎仔では総動脈幹を主徴とする大血管奇形が発生するため、神経堤細胞のマーカーを用いて遊走パターンの異常を解析した。さらに、Foxc1遺伝子のシークエンス解析を行い、遺伝子の系統差の確認を試みた。 後述のように、Foxc2マウスコロニーの繁殖に支障を来したため、実験に用いる胎仔の発生にばらつきが生じ、実験結果の誤差範囲が大きくなってしまった。このため、年度の3分の2は、マウス繁殖コロニーの充実と実験環境の整備を重点的に行った。現在、繁殖状況が安定し、Foxc2欠失胎仔も徐々に得られる傾向となったため実験を再試行し、データを集積・確認中である。
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