研究概要 |
研究課題である血管機能の評価のため,レーザドップラー血流計測システム(PeriFlux System5000)を使用して、川崎病後遠隔期に冠動脈病変を持つ症例27例(CA群),冠動脈病変消退例15例(Re群),急性期より冠動脈病変を持たない症例17例(No群),年齢を合わせリスク因子のない対照25例(Con群)における微小血管機能の評価を施行し,このシステムの有用性を明確にすることを目標として研究を続行した。またこれらの症例全例に血液検査を施行し,他のリスク因子がないことを確認し,今後の研究に参加できるかの意志確認を行った.安静時のperfusion unit(安静時PU)を計測、その後、腕帯を200mmHgまで加圧し、3分後に急速に減圧し、最大時のperfusion unit(最大PU)を記録したかぎりでは4群間での有意差を認めていない.しかしながら最大PUに達するまでの時間が、CA群においては有意に長く(CA群:Re群:No群:Con群=37-4±32.5秒:27.2±24-2秒:20-5±17.7秒:17.1±12.3秒,p<0.05),Re群とNo群,Con群では有意差を認めていないが,Re群では最大PUに達するまでの時間が長い傾向にあった.これらのデータは川崎病罹患後に冠状動脈瘤をもつ症例において、冠動脈以外にも微小血管を含めた末梢血管機能が傷害されている可能性を示唆している。頸動脈エコーが計測できた症例(冠動脈瘤例では内膜肥厚している症例を認めた)との比較検討を進めていき,川崎病遠隔期の血管機能が,将来の脳血管病変のリスク因子となりうるのかを明らかにしていき、また血流計での計測値の傾きや変化率、体表面積との関連などでの検討を施行しているが、まだ統計学的な差はあきらかではない。レーザドップラー血流計測システムの有用性については今後も検討が必要ではあるが、非侵襲的であり、様々な部位での計測が可能であることから、今後も研究対象や疾患の拡大が期待できると考える。これらの結果から冠動脈瘤退縮例や冠動脈正常例では内皮機能を含めた末梢血管は正常と考えるが、脈瘤残存例では機能障害の存在が示唆された。よって今後も長期の経過観察が必要と考える。
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