研究概要 |
【研究目的と意義】単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1),2型(HSV-2)および水痘・帯状庖疹ウイルス(VZV)による1感染症は,アシクロビル(ACV)などのウイルス性チミジンリン酸化酵素(vTK)関連薬剤により治療される.293T細胞にHSV-1の組換えvTKを一過性に発現させ,組換えvTK発現細胞におけるACVなどのvTK関連薬剤のvTK欠損HSV-1に対する増殖抑制効果を測定することにより,迅速に薬剤感受性試験成績を得るシステム(本研究で開発された)の,HSV-2やVZVの迅速薬剤感受性試験法への応用について検討した. 【材料と方法】ACV耐性HSV-2株から得られたvTK遺伝子,これまでの報告でACVに耐性を示したVZVに認められたTK遺伝子における変異が導入されたvTK遺伝子を,タンパク発現ベクターを用いて293T細胞で発現させた.各々のvTK発現293T細胞におけるACV耐性vTK欠損HSV-1TARに対するACVの増殖抑制効果をyield reduction法を用いて検討した.【結果】ACV感受性HSV-2のvTKが発現された293T細胞では,40μg/mlのACVによりTARの増殖は強く抑制されるのに対し,高度耐性株のvTK発現細胞では全く抑制されなかった.しかし,ACV耐性株のvTK発現細胞におけるACVのTARの増殖抑制効果は,増殖抑制効果が認められたものと認められなかったものとが存在した.一方,VZV-vTKにAGV耐性VZV臨床分離株に認められたアミノ酸変異が導入されたvTK発現293T細胞では,HSV-1TARの増殖抑制効果が低下した. 【考察】本システムを,HSV-2の薬剤感受性を迅速に測定するために応用する上では注意を要する.VZVの薬剤感受性に応用することが可能であることが明らかにされた.
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