研究概要 |
肝移植後の免疫不全状態で発症するEBウイルス(EBV)関連リンパ増殖性疾患は治療が困難であり、移植の治療成績のみならずレシピエントの生命予後にも重大な影響を与える。本研究は移植片を介したEBV感染のメカニズムの解明を目的とし、その予防法を開発することを目指す。移植後のEBV制御を可能にすることは早急に実現しなくてはいけない課題といえる。本年度は当センターで生体肝移植をする全てのドナー肝(0.5cm^3)におけるEBV感染細胞の存在を検討した。また、全てのレシピエントにおいて移植前後において定期的に細胞表面抗原マーカー解析(FCM解析)をおこないEBV感染が検出された前後における遺伝子発現比較解析を行った。平成21年度肝移植したドナー25例における肝組織からはEBVゲノムは直接の検出はできなかった。しかし、肝組織を1ヶ月培養したところ16例でEBV感染B細胞の増殖を認めた。そのうち4例においてEBV感染B細胞株(LCL)の樹立に成功した。このドナー肝を移植したレシピエントは現在EBV感染を認めていないが、EBVゲノムを末梢血から検出したところでEBVの繰り返し配列やポイントミューテーションを比較し同じドナー肝に存在したEBVであるのかを検討する。FCM解析により感染時における感染細胞の活性化が免疫抑制剤下でも検出できB細胞への感染ではCD69, CD71よりもCD23が有用であることが示された。現在TPAを指標とした免疫抑制剤量と拒絶・感染症の相関評価値の設定を合わせて試みている。肝移植後のEBVゲノム量の定量解析モニタリングを移植後毎週行ない検討した結果、EBVが末梢血中に検出された時に直に免疫抑制剤減量によるEBV特異的CTL誘導によりPTLD発症は抑えられることが示された。今後モニタリング開始時や免疫抑制剤の検討を行なっていく。
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