肝移植後の免疫不全状態で発症するEBウイルス(EBV)関連リンパ増殖性疾患は治療が困難であり、移植の治療成績のみならずレシピエントの生命予後にも重大な影響を与える。本研究は移植片を介したEBV感染のメカニズムの解明を目的とし、その予防法を開発することを目指す。移植後のEBV制御を可能にすることは早急に実現しなくてはいけない課題といえる。本年度は当センターで生体肝移植をする全てのドナー肝(0.5cm^3)におけるEBV感染細胞の存在を検討した。また、全てのレシピエントにおいて移植前後において定期的に細胞表面抗原マーカー解析(FCM解析)をおこないEBV感染が検出された前後における遺伝子発現比較解析を行った。平成22年度肝移植した中で、ドナー肝27例においてEBVゲノムは直接の検出はできなかった。しかし、肝組織を1ヶ月培養したところ20例でEBV感染B細胞の増殖を認めた。そのうち1例においてEBV感染B細胞株(LCL)の樹立に成功した。このドナー肝を移植したレシピエントは移植後EBV初感染を認めた。現在EBVの繰り返し配列やポイントミューテーションを比較し同じドナー肝に存在したEBVであるのかを検討している。FCM解析によるCD8+/HLA-DR+、CD4/CD8比でEBV特異的CTLの誘導の有無をある程度予測できることが明らかとなった。これにより各病院検査部でのFCM解析によるEBV特異的CTLに関して検討可能となった。また、誘導されるCTLが認識するエピトープはEBV膜遺伝子のひとつであるLMP2であることが多いことが初めて明らかとなった。現在TPAを指標とした免疫抑制剤量と拒絶・感染症の相関評価値の設定をするためのデータ集積を進めている。その結果、成人例よりもImmuKnow値の基準値が100近く低くなる可能性がでてきた。
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