研究概要 |
本研究では脳虚血ならびに子宮内炎症が胎生期の脳白質損傷に与える影響を解析した. 今年度は以前の実験ですでに得られていた脳組織標本を用いて,ヒツジ胎仔の脳白質における希突起膠細胞系(NG2,O4,CNPase,PLP)をそれぞれ免疫染色し,その分布密度を各群間で比較した.分布密度解析には免疫染色標本を顕微鏡下に同一条件で撮影した画像を用いた.線状体レベルで冠状断の標本を用いて,脳白質から各標本10枚ずつデジタル撮影し,画像解析ソフト(WinROOF,ver.6.1)を用いて染色強度を定量化した(integrated density,ID) 今年度は以前の実験ですでに得られていた脳組織標本を用いて,A群:壊死性卵膜臍帯炎+急性脱血もしくは貧血性低酸素(n=8,全例PVLあり),B群:壊死性卵膜臍帯炎+循環負荷なし(n=5,PVLなし),C群:炎症なし+循環負荷なし(n=5,PVLあり),D群:炎症なし+循環負荷なし(n=6,PVLなし),の4群間でIDを比較検討した(ANOVA). NG2陽性細胞IDの比較では4群間に差はなかった.AならびにB群はD群に比較して有意にO4陽性細胞IDが有意に少なく,CNPase陽性細胞IDが結いに多かった.C群はD群に比較して有意にO4陽性細胞IDが有意に少なくPLP陽性細胞IDが結いに多かった.A,B,C群はD群に比較していずれもTUNEL細胞陽性率が有意に小さかった. 以上より,脳虚血ならびに子宮内炎症は未熟なOL precursorにapoptosisを誘導するというよりは,むしろOL precursorからimmature OLへの成熟を著しく促進する(過成熟する)ことによって脳の成長障害を誘導していることが示唆された.
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