研究概要 |
先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome:CCHS)は,呼吸中枢の先天的な異常により,換気障害を呈する疾患であり,病因はPHOX2B変異である.一方,late onset central hypoventilation syndrome(LO-CHS)の約70%にも,PHOX2Bの変異が検出される. PHOX2Bの遺伝子変異を検出した51症例について,変異型と臨床症状および遺伝形式について検討した.変異は,ポリアラニン伸長変異(polyalanine repeat expansion mutation:PARM)50例,一塩基挿入変異(866InsG)1例である.伸長変異の内訳は,25PARM13例,26PARM14例,27PARM17例,30PARM2例,31PARM1例,32PARM1例,33PARM2例である. 25PARMでは,13例中9例は新生児期に,4例は乳児期以降に発症していた.新生児期に発症した4例では,生後数か月以降は呼吸管理を受けず,2例は感染症罹患時に再び呼吸管理を受けていた.巨大結腸症の合併は認めなかった.家族検索では,LO-CHSの症例や呼吸器症状を認めない家族も検出され,症状の多様性および不完全浸透が確認された.26以上のPARMおよび一塩基挿入変異では,全て新生児期に発症し,睡眠時に(症例によっては覚醒時も)継続的な呼吸管理を要し,巨大結腸症および慢性の便秘など自律神経系の異常が高頻度に認められた. 43家系44例の両親を検索し,40例はde novoの変異であり,4例(2例は兄弟)は変異のモザイクやLO-CHSに罹患した親からの遺伝であった. 家族を含めた遺伝子解析は,確定診断に基づいた診療を可能とし,罹患家族と保因者の検出および遺伝カウンセリングに有用である.
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