今年度の研究で、下記の結果が得られた。 1)未熟児・新生児における尿中バイオピリン濃度と血清ビリルビン値の関係; 成熟新生児では、生理的な血清ビリルビン値の変動と関連して尿中バイオピリン濃度の変化が観察された。一方、極小未熟児においては、このような生理的変化とは別に、周生期に急激な尿中バイオピリン濃度の変化を示す症例があり、強い酸化ストレスを反映している可能性が示唆された。 2)薬剤によるHO-1産生誘導と酸化ストレス緩和の可能性; クルクミンを用いて末梢血単核球よりのHO-1産生誘導が確認された。このことは、薬理学的アプローチにより炎症病態を緩和する治療の可能性を示しており、周生期における酸化ストレス軽減のための方法論の開発の契機となることが期待される。 3)多様な病態における血清サイトカインプロファイリング; 種々の炎症性疾患における強い炎症反応と血球貪食の発症機構を明らかにするために、血清サイトカインプロフィールを解析した。その結果、血球貪食症候群においてはIL-6、neopterin、IL-18などが増加していることが示された。一方で、回復期のプロフィールはHLHの発症要因となる基本病態により差がある可能性が示唆されている。例えば、全身型若年性特発性関節炎のような病態では、急性炎症病態が終息しても、IL-18の高値のみが遷延するが、EBV-HLHでは全てのサイトカインはほぼ一様に正常化する。これらの違いはHLHを発症するに至る病態の違いを反映していると考えられ、その詳細は現在解析中である。この成果の一部も現在論文が受理されている。またこのような急性炎症疾患における成果を踏まえて、周生期の酸化ストレス、炎症病態評価におけるサイトカイン定量の意義についても検討中である。
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