研究課題
平成22年度は、主としてDNAマイクロアレイ解析法を用いて、妊娠中の運動が生後の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。妊娠の全期間で自発運動をさせた実験群と運動をしなかった対照群との間での遺伝子発現を比較した。生後約8週令で対照群(6匹)と実験群(6匹)の海馬を取り出した。各群の6匹は、それぞれ2匹の母体から出産したものである。解析の結果、t-検定で有意な差があった8,009遺伝子データから6アレイすべてで2倍以上の変動を示した遺伝子が40あった。この40遺伝子の中で、遺伝子の発現が増加したのが3遺伝子あり、減少したのは37遺伝子あった。全体的に実験群では、遺伝子発現が増加するよりも減少する遺伝子のほうが優勢であった。特に明瞭に減少した遺伝子の中に、脳由来栄養因子(BDNF)が含まれていたことは注目に値する。昨年度の行動実験の結果では、うつ行動を判定する強制水泳テストで運動群で無動時間の延長(うつ行動)が見られていた。海馬でのBDNFの減少は、うつ行動と関連していることが報告されている。したがって、うつ行動を示す運動群で、BDNF遺伝子発現が減少していたことは理解しやすい結果であると考えられる。海馬のBDNFの減少は、海馬の記憶機能の低下とも関係すると報告されているので、妊娠中に自発運動をさせた運動群では、学習行動の低下が起こっている可能性がある。運動群で学習行動がどのようになっているかは今後検討する予定である。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Proteome Science
巻: 8 ページ: 41-52
Brain Research
巻: 1346 ページ: 26-42