研究課題
本研究の目的は胎内プログラミングによる腎発育異常におけるmTOR(The Manmmalian target of rapamycin)経路の役割を解明することである。近年、生活習慣病発症の危険因子として子宮内発育遅延(IUGR)、母体への薬物投与が挙げられ、高血圧発症機序として母体の低栄養、ステロイド(グルココルチコイド)投与によるネフロン数減少が報告されているが、詳細な機序は未解明である。mTORはセリン・スレオニンキナーゼでその経路は低栄養やステロイド投与で活性が抑制され、細胞のmacroautophagy(以下autophagy)を呈す。Autophagyは2型programmed cell deathを伴い、発生過程において重要な役割を果たす。プログラミングによる腎発育異常に関与する可能性が高いと考えられ、ネフロン数減少にmTOR経路の関与が示唆される。平成21年度はin vivoで母体低栄養、ステロイド投与により後腎が受ける影響を検討した。母胎に栄養制限またはステロイド投与を行った胎児の新生児早期後腎は大きさ、糸球体の数共に有意に減少した。これら後腎の遺伝子および蛋白の発現を網羅的に解析し、発生、シグナル伝達、mTOR経路、細胞増殖、アポトーシス、トランスポーター、イオンチャネルを含む多くの遺伝子・蛋白の発現が変化することを確認した。この結果から腎の成長・糸球体形成に加え、尿細管機能も影響を受けることが示唆された。さらにmTOR経路、MAPキナーゼ経路を含む腎発生に重要な細胞内信号伝達経路が受ける影響を後腎の免疫組織染色、ウエスタンブロットなどで検討した。低栄養では初期にこれらの経路は抑制されたが、その後活性化され、かつ生後日数が経つと対照とほぼ同等になることが判明し、早期の低栄養に対する代償反応が起きている可能性が示唆された。ステロイド投与によるmTOR経路への影響は後腎の免疫組織染色を行い、mTOR活性が抑制されることを確認した。ウエスタンブロットでは有意な結果が得られておらず、検証中である.
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