本研究では、妊娠初期バルプロ酸(VPA)服用により出生児にみられる自閉症の発現機序を解明するために、VPAの薬理作用の1つであるピストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用に注目し、VPA投与後の胎児脳におけるヒストン修飾と我々が検出した形態学的変化との関連性を解明する。さらに、我々が確立した出生児脳のネットワーク検出法を用いて、胎生期VPA投与後のラット新生児期の神経回路への影響を検討し、胎生期VPA投与による胎児脳のピストン修飾と生後の機能障害の発現を、胎児脳および新生児脳観察から解明することを目的とする。 今年度は、昨年度に引き続き、VPA誘発性の中脳領域に認められた形態異常と、その領域を統御している転写因子の発現との関係を検討した。この境界部のTHおよび5-HT分布を統御している代表的な転写因子であるGtx2およびOtx2の発現分布を調べるために昨年度中に作製したプローブを用いて、妊娠11日および妊娠16日の胎児脳を用いてRT-PCRにて転写因子の発現量を検討中である。また、これらのプローブを用いたin situハイブリダイゼーションを実施するための準備も進めている。さらに、これらに先行して、来年度に実施する予定としている新生児を用いた動物実験を開始した。
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