研究概要 |
FIRSが胎児・新生児の重篤な多臓器障害に繋がることはよく知られているが、前期破水、絨毛膜羊膜炎などがFIRSに進展していることを診断する方法はなく、妊娠中の胎児に感染が波及しているかどうかを知る方法の開発は重要なテーマである。 我々は、母体血漿cell-free RNA及び母体血細胞成分由来RNAを用いて妊娠合併症の発症予知の研究に取り組んでいるが、この手法で絨毛膜羊膜炎とFIRSに進展した状態を区別する分子マーカーの確立を目指している。今年度、切迫早産、前期破水、子宮頚管炎、絨毛膜羊膜炎で入院管理を行った症例を対象に、入院時、1週間後、2週間後と毎週の母体血採取を開始した。また、この際、母体血で一般検査として血算、CRPの測定、頚管の顆粒球エラスターゼ値、胎児性フィブロネクチン値の測定も行い記録している。また、羊水検査を行った症例ではこれらの羊水中濃度の測定も行っている。しかし、これまでの段階で胎児感染を認めた症例でのサンプリングはでてきておらず、絨毛膜羊膜炎の症例がわずかにのみである。我々は、分子マーカーのターゲットとしてIL-6,IL-8などの炎症性サイトカインを想定していたが、母体が発熱するような状況では既に母体血細胞成分由来のそれらの発現量は上昇しており、それがFIRSの分子マーカーとして活用できる可能性は症例数が少ないものの難しいという結果である。妊娠中に胎児感染が起こる前に分娩誘導されることが多く、その意味で、FIRSの分子マーカーの研究は多施設研究などを行わないと難しい現状が明らかになった。 この手法を用い、母体血中細胞成分由来RNAを用いて癒着胎盤の予知の可能性について検討を行った。PLAC-1とVEGFA発現は正常例に比較し有意に高値を示した。また、KISS-1遺伝子発現は逆に低値を示した。これらを用いることで癒着胎盤の予測が可能になる可能性がある。
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