羊水中のmidkine(MK)濃度の多寡を知ることは、本研究において極めて重要である。そこで本年度の研究において、MK測定系の樹立を試みた。商業ベースで入手可能な(Peplotech社)抗体およびリコンビナント蛋白を用いてMidkine ELISA系を構築し、標準品濃度100~1.56ng/mLの範囲で良好な検量線を得たが、なお測定感度を上げるための条件検討が必要と思われた。この測定条件下で妊娠中期および後期羊水のMK測定を行ったところ、Western Blotの結果と同様に、妊娠後期に比べ妊娠中期でMKはより高濃度に存在しているとの予備的結果を得た。今後、測定系をさらに至適化しデータを得る予定である。また少なくとも3種類のMK抗体を用いて行ったWestern Blotにおいて、どの抗体を用いてもMKのバンドは、単量体で推定される位置よりも高分子側で検出された。そこでこの羊水中MK高分子化の機序について、多量体化、コビキチン化、糖鎖付加等の観点から検討を進める予定である。また羊水中のMK産生源候補であるヒト胎児肺、腎臓においてMK蛋白の発現・局在を免疫組織化学により検討した。商業ベースで入手可能であった標本を用いた予備的検討では、妊娠中期胎児腎には尿細管にMK蛋白の局在を認めたが、妊娠末期肺ではMK発現は見られなかった。今後は各妊娠時期における同様の検討を連携研究者や海外研究協力者の協力も得て行う予定である。一方、ヒト胎児副腎皮質細胞のモデルとして表現型の類似したNCI295A細胞を用いて、MK添加実験を行いMKのHSD3B2mRNA発現抑制が認められるかに関して検討したが、外因性リコンビナントMK24時間添加では、HSD3B2を含めステロイド産生酵素のmRNA発現に有意な変化は得られなかった。今後、実験条件の追加・変更およびMK過剰発現実験を行う必要があるものと考えられた。
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