Midkine(MK)が胎児由来シグナルである可能性について検討を行った。まずヒト羊水中のMK濃度測定については、ELISA測定条件を改善し、妊娠中期でMKはより高濃度に羊水中に存在していることが確認された。羊水中のMK産生源候補としては胎児腎臓が挙げられたが、早産児を含めた出生直後の児の尿中にはELISA感度以上のMK蛋白が存在しないことが明らかとなり、この可能性は否定的と考えられた。一方、妊娠中期胎児肺MK mRNAは腎臓より高発現しており、妊娠末期胎児肺では免疫組織学的にMK蛋白発現は証明できていないものの、mRNA量から推測して妊娠中期では有意な蛋白発現が見られている可能性が高い。次年度は胎児肺が主要な羊水中MK産生源である可能性をさらに追求する。 胎児副腎については、機能層であるヒト胎児副腎内層(fetal zone)に選択的に発現する蛋白として、ovary-specific acidic protein(OSAP)を見いだした。OSAPはステロイド産生臓器、特に副腎に多く発現するミトコンドリア蛋白であるが、ヒト成人副腎より胎児副腎でより多く発現していることが明らかとなった。また胎児副腎皮質モデル細胞株であるNCI-H295A細胞でOSAP蛋白を一時的にknock downすると、培養液中のコルチゾールやdehydroepiandrosterone sulfate産生量が低下した。一方、非機能層であるヒト胎児副腎外層に選択的に発現する蛋白であるNGFI-Bファミリーのontogenicな発現について、laser-capture microdissectionを用いて検討を行ったところ、HSD3B2に極めて類似した発現挙動を示すことが明らかとなり、これら転写因子のHSD3B2発現制御における関与が示唆された。
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