研究概要 |
常染色体優性遺伝性疾患の一つであるMichelin tire baby syndromeについて、責任遺伝子の候補領域を絞り込む作業を、遺伝子連鎖解析法を用いて行った。新たに加わった同地域在住の2家系を含め、founder effect存在の仮定のもとで解析したところ、マイクロサテライトマーカーD7S2480-D7S515の範囲(Interval 1Mb)に疾患との連鎖を認め、この領域に責任遺伝子が存在することが示唆された。以上の範囲に含まれる遺伝子をデータベースより抽出し、候補と考えられる遺伝子を直接シークエンス法を用いて変異解析した。現在までEMID2、PCOLCE、PLOD3のシークエンスを完了しているが、変異は同定されていない。Michelin tire baby syndromeの責任遺伝子を同定するに当たって、別な視点からの解析も行った。全身の皮膚の著明な皺が特徴である犬種シャーペイ犬において、ヒアルロン酸合成酵素の一種であるHyaluronan synthase 2の遺伝子HAS2に特有のSingle nucleotide polymorphismが確認されている(Akey et al.Proc Natl Acad Sci USA 107;1160-5:2010)。ヒアルロン酸は皮膚の結合織において普遍的で重要な基質の一つであり、Michelin tire baby syndromeの責任遺伝子として理論的に有力である。以上からヒトにおけるHyaluronan synthase 3種(HYAL1, HYAL2, HYAL3)の遺伝子と疾患の連鎖について解析を行った。上記3遺伝子の近傍に存在するマイクロサテライトマーカーを抽出し(それぞれD19S571,D8S514,D16S515)、罹患者との連鎖解析を行ったところ、D19S571のみに疾患との連鎖が認められ、HYAL1とMichelin tire baby syndromeに疾患関連性の存在することが示唆された。今後、HYAL1のエクソン領域を直接シークエンスするとともに、イントロン領域のSingle nucleotide polymorphismについても検索し、疾患との関連について検討したい。
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