研究概要 |
アトピー性皮膚炎に代表される、バリア破綻に誘導される皮膚の炎症・免疫応答を検討するために、応募者らは表皮角化細胞特異的セラミド合成酵素遺伝子破壊マウスK5.sptlc2-/-を用いた研究を行ってきた。このマウスは生後2週目よりバリア機能が破綻し、それに伴って皮膚炎を発症する。そこにランゲルハンス細胞の活性化とTh17,γδT17の関与を示唆する結果を昨年度報告している。本年度の研究実績の概要を以下に述べる。 1)未だバリア機能に異常の認められない新生仔K5.sptlc2-/-マウスの皮膚にテープストリッピングをするとバリア機能の回復が遅延する。これはバリア障害に反応したセラミドの合成がバリアの速やかな修復に必須であることを示す。そこで、テープストリッピング刺激後、皮膚の遺伝子発現の変化を野生型新生仔マウスと比較した。K5.sptlc2-/-マウスにおいては正常コントロールに較べIL-17A,IL-23p19,IL-1a,TNFa,IFNaの発現が有意に高値を示した。 2)新生仔K5.sptlc2-/-マウスから分離した培養表皮角化細胞についてマイクロアレー解析した結果、TSLP,amphiregulin,aquaporin3の遺伝子発現が野生型マウスにくらべ有意に上昇していた。これは、セラミドの生合成抑制によるconstitutiveな変化を示す。 3)とくにTSLP遺伝子発現はさらにテープストリッピングによって上昇することも明らかになった。これは、バリア破壊がTSP上昇を介したTh2シフトへの可能性を示唆する。 4)K5.sptlc2-/-マウスは生後2週より表皮の肥厚を伴った炎症性変化が著明になる。このときの皮疹部における遺伝子発現を検討したところ、IL-17A,IL-17F,IL-22,IL-23に加えてIL-4やIFNgのmRNAが上昇しており、Th17のみならず、Tb1,Th2を含む多彩な炎症が発症に関与することを示唆している。
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