CD10は非常に興味深いendopeptidaseであり、substancePやenkephalinを分解する特殊な酵素であることが知られている。我々は皮膚有棘細胞癌(SCC)が浸潤する際に、周囲間質の線維芽細胞にCD10を発現させること、そしてこの現象は脂漏性角化症、ボーエン病、日光角化症では認められないことをすでに報告した。この現象がin vitroで再現できるかどうかを確かめるために、SCC細胞株とnon-tumorigenic表皮細胞HaCaT株をそれぞれ正常線維芽細胞(Fb)と共培養したところ、HaCaTにくらべ、SCCとの共培養がFbに強くCD10を発現させた。SCC培養液にCD10誘導作用があることから、各種サイトカインでFbを刺激しCD10誘導能を検討したところ、IL-1aとTNF-aに誘導活性を認めた。SCC培養液中には、TNF-aは検出できず、IL-1aの産生がHaCaTに比べ有意に高値を示したことから、本培養系におけるCD10誘導能はIL-1aに依存していると結論した。そこで、再度、脂漏性角化症とSCCにおけるIL-1aの発現を免疫組織学的に検討したところ、IL-1aの発現は脂漏性角化症では認められなかったが、SCCでは検出できた。そこで、CD10+FbがSCCの浸潤にどのように関与しているかをさらに検討しようと考えた。準備段階として、FbにCD10に対するsmall interference RNA(Si-RNA)を導入し、CD10をknock-downできるかどうかを検討した。Si-CD10の導入によって、CD10をmRNAおよび蛋白レベルで強くknockdownできることに成功した。現在、共培養系で、CD10KD-Fbとcontrol-FbがSCCのMMP産生能に与える影響、SCCの浸潤能に与える影響、CD10の基質であるsubstance Pに与える影響などを今後検討していく予定である。またSCCのinvasion assayへの影響も検討したいと考えている。その他、悪性腫瘍に関するいくつかの英文論文を学術雑誌に掲載した。
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