1)皮膚病理学的検討 我々はカテプシンKやアルギナーゼの腫瘍における発現を検討した。皮膚有棘細胞癌(SCC)が浸潤する際に、周囲間質の線維芽細胞にカテプシンKが発現され、増殖能(Ki-67)と相関することを明らかにし、報告した。さらに悪性末梢神経鞘腫においては腫瘍に強発現し、神経線維腫との鑑別にも有用であることを報告した。またアルギナーゼの発現を軟部悪性腫瘍において検討したところ、興味深いことに隆起性皮膚線維肉腫を除いてほとんどの腫瘍で強く発現することが明らかになった。 2)上皮系悪性腫瘍細胞株と線維芽細胞の培養による検討 昨年度に引き続き、SCC細胞株とnon-tumorigenic表皮細胞HaCaT株をそれぞれ正常線維芽細胞(Fb)と共培養して検討を行った。CD10の基質であるsubstance PはSCCおよびFbから産生され、MMP産生を介してmatrigelでの腫瘍浸潤を促進することがわかった。さらにsiRNAの導入により作成したCD10ノックダウン-Fbにおいては、substance Pが高値となって、SCCの浸潤能が高まった。昨年度の結果と合わせて考えると、SCC由来IL-1により誘導されるCD10+Fbは、substance P濃度を低下させることで、SCCの浸潤能をむしろ抑制するということが明らかになった。 また、1)の結果を踏まえて、カテプシンK発現FbとSCC細胞株の共培養も行い検討した。その結果、SCC株由来のIL-1αがFbにおけるカテプシンK発現を誘導することがわかった。またFbのカテプシンKをノックダウンしたところ、SCCの浸潤能が抑制されたことから、FbにおけるカテプシンKがSCCの浸潤に重要な役割を果たしていることが示唆された。 その他、悪性腫瘍に関するいくつかの英文論文を学術雑誌に掲載した。
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