研究概要 |
CD147/basiginが皮膚癌の増殖、浸潤・転移および薬剤多剤耐性に果す役割を解明し、これらの作用に対する解糖系の関連を明らかにし、皮膚癌の新たな治療戦略の構築に必要な基礎的知見を得ることを目的に本研究を計画した。21年度にCD147/basiginをノックダウンした悪性黒色腫細胞株(Bsg(-)A375細胞)を樹立し、CD147/basiginが癌の増殖、浸潤および薬剤多剤耐性に関与していること、22年度には乳酸の細胞内外への輸送を司るmonocrboxylic acid transporter (MCT)-1,および4の発現調節を介して黒色腫細胞の解糖系を制御することで増殖、浸潤を促進していることを明らかにした。 23年度には局所浸潤の機序を検討し以下の知見を得た。 (1)Bsg(+)A375細胞ではCD147/basiginはA375細胞上でintegrinと共存している。 (2)Bsg(-)A375細胞ではintegrinの下流のキナーゼであるfocal adhesion kinase (FAK)がリン酸化し、integrinが細胞質内に斑紋状に分布する。 (3)Bsg(-)A375細胞ではI型およびIV型コラーゲンに対する接着能が有意に低下する。 以上の結果は、CD147/basiginがFAKのリン酸化を介して黒色腫細胞と基質の接着さらには局所浸潤を制御していることを示している。
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