研究課題/領域番号 |
21591441
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
後藤 孝也 自治医科大学, 医学部, 講師 (80284355)
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研究分担者 |
岩本 禎彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (10232711)
中山 一大 自治医科大学, 医学部, 助教 (90433581)
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キーワード | 病理学 / 皮膚腫瘍 / プロテオーム / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
慈恵医大にて経過観察中の神経線維腫症患者から同意のもと得られた腫瘍組織から、腫瘍部と正常組織を鑑別した後それぞれの組織から蛋白質およびゲノム遺伝子を採取した。現在までの症例数は49名となり、のべ組織片は92組織に及ぶ。同一患者での悪性神経梢腫病理組織と良性神経線維腫の両方の組織を得た患者は3名である。組織より蛋白質とゲノムDNAを抽出し、二次元電気泳動とゲノム遺伝子アレイの解析を行い、その差異を確認した。ゲノム遺伝子でのアレイ解析では、低分子量G蛋白質であるRhoシグナルの下流に位置する因子の差が確認できたが、蛋白質の発現レベルではその有意な差は認められなかった。蛋白質の発現のみでは確認できない修飾に関して解析を進めるために、リン酸化および糖鎖の修飾に着目して、リン酸化については、リン酸化蛋白質を回収できるカラムを用い、また糖鎖の修飾に関してはレクチンに対する結合性を利用して分取し、タグ蛋白質に対する抗体の免疫沈降を併用して単離して同定を試みた。同定は、TOF・MASSの分析装置を用いて解析した。同定された蛋白質のピークに対してフラグメント化を行いフラグメントの質量ピークから解析をした結果、候補と言えるRhoの情報伝達因子およびTGFβの情報伝達因子の下流の転写制御因子の等鎖の修飾がその機能の制御に重要な働きを持っていることを示唆する結果が得られた。神経線維腫の原因遺伝子は低分子量G蛋白質の内、Rasの制御因子である。このことと、今回得られた結果は一見矛盾する結果である。しかしながら、Rhoの細胞内情報伝達の機能は多岐にわたり、細胞の運動性に関与することはこれまでの報告から判っており、このことは、神経線維腫の臨床症状が多岐にわたりまた、悪性化した際、その増殖能が良性の神経線維腫と比較して早く悪性度を規定していることと矛盾しないので、何らかの関係があることが想定できた。今後の解析課題である。
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