研究概要 |
癌細胞による免疫回避機構は、癌の免疫療法において重大な障害であり、その克服は癌免疫療法を成功させる重要な課題である。我々は、ヒト悪性黒色腫細胞株において活性型BRAF^<V600E>変異がIL-6,IL-10,VEGF等の免疫抑制分子の産生を制御している事を明らかにしてきたが、まだ多くの癌細胞に由来する様々な免疫抑制性因子の産生機構は未知である。そこで我々は癌細胞で恒常的に活性化しているシグナル伝達経路が、免疫抑制性因子の産生を制御しているという仮説のもと、siRNAライブラリーを用いて樹状細胞からのIL-12の産生回復を指標とした機能的スクリーニング法により、免疫抑制に関わる新規シグナル伝達経路の同定を試み、最終的に7つの分子を同定した。これまでの解析により、候補分子の1つであるSTK24(Serine/Threonine kinase 24)は、ヒト悪性黒色腫細胞株のIL-6,IL-10,TGF-β1の産生を介して免疫回避機構を成立させている事を明らかにした。今年度はmulti-plexを用いた網羅的な解析により更なる免疫抑制分子の同定を試み、STK24がCCL2の産生制御していることを見出した。また、STK24は多くのヒト悪性黒色腫細胞株を含む癌細胞株やヒト悪性黒色腫組織検体において、正常細胞株や組織に比ベリン酸化が著しく亢進していることも確認された。さらに担癌生体におけるSTK24と免疫制御との関連性について担癌マウスモデルを用いた解析を試みた。その結果、STK24の発現を抑制したヒト悪性黒色腫細胞株A375を移植した群では、コントロール群に比べ腫瘍内浸潤しているCD11b^+ Macrophageの減少や腫瘍サイズの低下が認められた。以上のことより、STK24は悪性黒色腫においてCCL2の産生を介する免疫抑制機構の誘導等で、腫瘍微小環境を制御し増殖性促進する可能性が示唆された。
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